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2024/05/14

肘部管症候群について

肘部管とは、上腕骨尺骨神経溝から尺側手根屈筋の2頭間にある腱性アーチ(肘頭と上腕骨内側上顆に張るOsborne 靱帯と滑車上肘靱帯)までをいいます。
肘部管症候群(Cubital Tunnel Syndrome:CuTS)は、肘部管部で尺骨神経が絞扼されて生じる高位尺骨神経麻痺であり、病態は進行性です。
絞扼部位は、約8割がOsborne靱帯、1割が上腕三頭筋内側頭の肥大であり、このほかにも上腕三頭筋の筋膜上に存在するStruthers腱弓や滑車上肘筋などの存在も関与します。
また肘屈曲位において肘部管内圧亢進や血流量低下が生じて、症状が増強する恐れもあります。
主に圧迫が原因とされていますが、尺骨神経脱臼・亜脱臼も病態に関与します。

尺骨神経麻痺の症状として、小指の掌・背側と環指尺側のしびれと知覚障害、疼痛を生じます。
進行すると手内在筋(虫様筋)麻痺により小指の鈎爪変形をきたし、握力や巧緻性が低下します。
症状がさらに進行すると、鉤爪指変形やFroment徴候を生じます。
さらに肘関節可動域制限を生じる場合、上肢機能に関与する日常生活にも支障をきたします。
進行性であるため、早期診断と治療方針の決定が重要です。
所見として、①肘部管でのTinel徴候、②Froment徴候、③肘屈曲テスト、④指交差テストが陽性となります。

肘部管症候群(CuTS)の疫学的頻度は0.02~1.8%と決して高くないものの、上肢の絞扼性神経障害としては手根管症候群に続いて2 番目に多い疾患です。
中年男性に多く、単なる加齢だけではなく、農作業、建築業、振動器具の使用などの重労働が関連します。
若年者では野球、柔道、ウエイトリフティング、バスケットボールなどのスポーツ競技者に発症しやすいことが報告されています。

変形性肘関節症による骨棘形成に伴う狭小化が発症因子として多く、関節リウマチ、外傷後の外反肘・内反肘、ガングリオンなども挙げられます。
変形性肘関節症では、骨棘の形成により肘部管容積が狭くなることによって、尺骨神経がOsborne靱帯に圧迫されます。
一方特発性では明らかな器質的原因は明らかでないですが、Osborne靱帯による絞扼が主な原因のことが多いことが報告されています。
日本では、変形性肘関節症(osteoarthritis:OA)によるものが 64%で最も多く、次いで特発性が 9%、肘OAとガングリオン合併例が8%、尺骨神経の脱臼が5%、外傷後4%、外反肘3%、内反肘3%とされています。

まずは医師により診断および治療方針を決定します。
診断にあたって、頸部神経根症、胸郭出口症候群などによる尺骨神経障害との鑑別が重要です。
治療方針は、骨間筋萎縮や神経伝導速度低下の有無によって手術療法もしくは保存療法が選択されます。
進行性であるため、早期診断と治療方針の決定が重要です。
重症度分類としてMcGowan分類や赤堀分類を用います。
赤堀分類では、2 期の知覚障害が強い症例と3 期以上の重症例は手術適応となります。

レントゲンで変形性関節症や外反肘の有無、骨棘の程度を確認します。
また頸椎病変を除外するために頸椎の撮影も行います。
疼痛の強い場合は、ガングリオンの疑いでMRI 撮影を行う。
神経伝導速度検査により、肘部管を挟んだ伝導遅延が認められれば確定診断となり、これは手術適応を判断するうえでも有用な所見となります。

保存療法の適応は、手内在筋萎縮と筋力低下のない軽症例です。
また若年者におけるスポーツが原因となる場合は保存療法を優先します。
一方、中高年者において麻痺の進行を認める場合や保存療法に抵抗する症例では手術療法を選択します。

当院ではFascia Slick Technic(ファシアスリックテクニック)を用いて神経絞扼を起こしている組織に対しアプローチし、同時に繰り返さないための生活環境の提案を行なっております。

肘部管症候群について
肘部管症候群について

2024/05/13

肩関節周囲炎(五十肩・四十肩)について

肩関節周囲炎は一般的に五十肩や四十肩と呼ばれ、肩関節の痛みと可動域制限を主な症状とし、長期間かけて3つのステージを経て寛解に至る状態です。
経過としては、まず明らかな怪我・誘因がなく肩関節に痛みが生じ、進行的に悪化し、後発的に肩関節可動域制限が生じる(炎症期)。
その後、疼痛が軽減して固さだけが残る(拘縮期)。
経過とともに拘縮が改善していく(寛解期)とされています。
自然に改善するとされていますが、寛解には発症から12~42か月かかり、強い痛みや固さが慢性化することもあります。

レントゲンでは特徴的な骨所見はなく、MRIでは烏口上腕靱帯周囲の肥厚や増殖性滑膜炎・関節包の縮小や肥厚が観察されます。
血液検査では白血球増多、ESR上昇、CRP上昇などは認めないことが多いことが特徴です。

明らかな誘因がない一次性の肩関節周囲炎の有病率は一般人口の2.0~5.3%です。
好発年齢は40~65歳で、女性に多く、反対の肩に肩関節周囲炎の既往がある方は発症しやすい傾向にあります。
糖尿病や甲状腺疾患に関連する二次性肩関節周囲炎の有病率は4.3~38.0%です。
糖尿病を合併している肩関節周囲炎症例の90%は保存療法で治癒します。

肩関節周囲炎に対する施術ではどのステージであるかを判断し、それぞれに合った治療を行うのが重要です。
炎症期の施術では疼痛緩和を目的とした運動制限(ポジショニングによる安静)を行い、症状の悪化がないことを確認のうえ、痛みの生じない範囲での肩関節運動を行います。疼痛緩和目的に整形外科での薬物療法(外用薬や NSAIDs,ステロイド注射)や物理療法を併用することがあります。
拘縮期では、疼痛緩和に加えて、他動的関節可動域の拡大を少しずつ進めていくことにより、痛みのない運動範囲を増やすことを目的にします。可動域制限に対する伸張運動では、痛みの程度に合わせて強さを調整します。疼痛緩和や運動範囲の獲得を目的に、温熱療法や電気療法を可動域運動前に行うことがあります。
寛解期は疼痛や関節可動域制限が改善し、日常生活の制限もなりますが、正常な肩と比較すると可動域制限が残存していることが多くあります。職業やスポーツなど、患者の目標に合わせてセルフエクササイズを中心とした積極的な施術を行います。

肩関節周囲炎(五十肩・四十肩)について
肩関節周囲炎(五十肩・四十肩)について

2024/05/04

日本理学療法士協会 フレイル予防人材育成研修プログラムの受講を開始しました

日本理学療法士協会 フレイル予防人材育成研修プログラムの受講を開始しました。

内容
【Ⅰ:全体像】
日本理学療法士協会からのメッセージ
・日本理学療法士協会の具体的な取組みと方向性について
・保険者機能強化推進交付金、介護保険保険者努力支援交付金に関して
・新型コロナ感染症予防について
後期高齢者医療制度における課題とこれから
・これまでの後期高齢者に関わる制度の課題とこれからの方向性について
高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施の全体像
・介護予防事業の変遷と背景
・法律の改正に伴う厚生労働省の通知及びガイドラインについて
・法改正、通知及びガイドラインにより広域連合と市町村が担う主な役割について
・後期高齢者の質問票の概要について

【Ⅱ:保健事業としての疾病重症化の予防対策】
糖尿病の重症化予防への関わり
・疾病予防・重症化予防について理学療法士のあり方
膝関節痛・腰痛の重症化予防への関わり
・疾病予防・重症化予防について理学療法士のあり方(ロコモティブシンドローム含む)
循環器病の重症化予防への関わり
・疾病予防・重症化予防について理学療法士のあり方

【Ⅲ:介護予防としてのフレイル対策】
フレイルの概念
・フレイルの概念、特徴、予後など
フレイルの評価と介入
・評価の紹介とエビデンスの紹介など
地域におけるフレイル予防への関わり
・後期高齢者の保健事業、通所C、通いの場など
・基本的なデータによる効果検証方法とPDCAサイクル
・フレイル予防のための介入事業のデータ活用

【Ⅳ:好事例】
好事例 1 健診介入から指導まで一体的な関わりの事例
・特定健診/後期高齢者健診介入から指導まで、一体的なかかわりの中での理学療法士の役割、今後の展望。
好事例 2 複合的なフレイル予防の事例
・後期高齢者個別訪問からの複合的フレイル予防において理学療法士が果たす役割、今後の展望。
・国モデル事業
好事例3 重症化予防として関わりの事例
・医療機関で実施される健診指導における重症化予防において理学療法士が果たす役割、今後の展望。
好事例4 都道府県士会や行政の理学療法士が展開する地域づくりの事例
・保健事業・介護予防の事業の一体実施において行政理学療法士が果たす役割、今後の展望。
・保険者機能強化交付金について
・都道府県士会の人材育成/事業展開の取り組み

日本理学療法士協会 フレイル予防人材育成研修プログラムの受講を開始しました
日本理学療法士協会 フレイル予防人材育成研修プログラムの受講を開始しました

2024/04/24

腰部脊柱管狭窄症について

腰部脊柱管狭窄症は、腰の背骨の中にある脊柱管(脊髄の通り道)、神経根(脊髄から分かれた神経の根本)あるいは椎間孔(神経が出てくる背骨の隙間)が狭くなるために馬尾(脊髄の下部)や神経根が障害されて様々な症状が生じる病態の総称です。
日本脊椎脊髄病学会の『脊椎脊髄病用語事典』によると、腰部脊柱管狭窄症は「脊柱管を構成する骨性要素や椎間板、靱帯性要素などによって腰部の脊柱管や椎間孔が狭小となり、馬尾あるいは神経根の絞扼性障害をきたして症状の発現したもの(絞扼部によってcentralとlateralに分けられる)とされています。
特有な臨床症状として、下肢(下半身)のしびれと馬尾性間欠跛行(一度に長い距離を歩けない状態)が出現する」と記載されています。
North American Spine Societyの診療ガイドラインでは「腰椎において神経組織と血管のスペースが減少することにより、腰痛はなくてもよいが、殿部(お尻)や下肢痛(下半身の痛み) がみられる症候群」と定義しています。
臨床症状は神経の障害されている部位により神経根型、馬尾型、混合型に分類されます。
神経根型では殿部・下肢痛やしびれを認めます。
疼痛(痛み)・しびれやそれに関連する神経性間欠跛行(一度に長い距離を歩けない状態)などの症状は、前屈(前屈みの姿勢)や座位保持(座っている姿勢の保持)で軽快することが多いことが特徴です。
馬尾型では下肢・殿部だけでなく会陰部に異常感覚を呈するのが特徴です。
重度な狭窄では膀胱直腸障害(頻尿・夜間尿・残尿感・尿失禁・便失禁)が生じることがあります。
腰部脊柱管狭窄症の成因や病理学的な変化が完全には解明されておらず、複数の症候の組み合わせにより診断される症候群とするの が妥当であるとの見解が示されています。
『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021』では実際の臨床所見をもとにした診断基準を提唱して います。
①殿部から下肢の疼痛やしびれを有する。
②殿部から下肢の疼痛やしびれは立位や歩行の持続 によって出現あるいは増悪し、前屈や座位保持で軽快する。
③腰痛の有無は問わない。
④臨床所見を説明できるMRIなどの画像で変性狭窄所見が存在する。
以上の4つの項目をすべて満たす場合に腰部脊柱管狭窄症と診断します。

日本における高齢者に対する大規模なコホート研究(調査時点で、仮説として考えられる要因を持つ集団(曝露群)と持たない集団(非曝露群)を追跡し、両群の疾病の罹患率または死亡率を比較する方法)の結果から、高齢者における腰椎のMRI所見では、重度の狭窄を有する者は30%近く存在するが、そのうち症状を呈する者は20%に満たないと言われています。
腰部脊柱管狭窄症の有病率(ある一時点で、特定の疾患の全患者の数を、その時点でその疾患を患う可能性のある人口で割ったもの)は10%ほどで、有病者は580万人と推定されています。
有病率において性差は認められていません。
腰部脊柱管狭窄症の軽度または中等度の患者のうち、治療を施さない自然経過であっても1/3~1/2の患者では良好な予後が期待できるとされています。
保存治療にて効果を示した120例を5年間経過観察した研究では、最終経過観察時の自覚症状において52例(43.3%)が改善し、20例(16.7%)が不変、48例(40.0%)が悪化したと報告されています。
また神経根型の患者および初期治療にてよく改善した患者では予後は良好であり、変性側弯がある患者では成績が不良であったと記されています。
重度の腰部脊柱管狭窄症では手術に移行することが多く、自然経過は明らかではありません。

疑わしい場合は医療機関を受診し、診察と理学検査により、膀胱直腸障害やサドル麻痺(自転車に乗るときにサドルに当たる部分に感覚麻痺が起こること)などの重症の馬尾症候群をトリアージをします。
陽性の場合、早期の手術療法が適応となります。
単純 X 線(レントゲン)では脊柱管狭窄症の確定診断は困難なため、MRIで脊柱管や椎間孔の変性や狭窄状態を確認します。
神経学的検査を詳細に行い、神経症状の把握に努めます。理学療法時の神経症状の増悪には注意が必要です。
一定時間の歩行距離の計測は神経性間欠跛行の評価として用いられています。腰椎は、伸展(伸びること)により脊柱管および神経根の前後径や面積が縮小するため、伸展で症状が出現する場合、過度に可動性を有する脊柱分節(背骨1つ1つのこと)を特定し、股関節および隣接する脊柱分節に可動性の低下がないか確認します。

当院で対応可能な範囲は、医師による診察を受け、現時点では医師による治療が必要ないと判断された方に限定されます。
当院での施術としては、症状の原因と考えられる部位に対しモビリゼーションやマニピュレーションを行い、同時に原因部位への負担が少ない体の動かし方や姿勢を身につけるための運動療法、生活環境へのアドバイスなど多角的にアプローチしております。

腰部脊柱管狭窄症について
腰部脊柱管狭窄症について

2024/04/23

パーキンソン病による姿勢異常について学んできました

大阪府理学療法士会 生涯学習センター 主催
パーキンソン病による姿勢異常 ~体幹のアライメントどこまで治る?~

2024年4月23日(火)
関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科の先生にパーキンソン病のメカニズム、国際的評価法、理学療法についてご講義いただきました。

パーキンソン病による姿勢異常について学んできました
パーキンソン病による姿勢異常について学んできました

2024/04/19

循環器疾患に対する運動療法について学んできました

大阪府理学療法士会 生涯学習センター 主催
循環器疾患の運動療法の実際 ~リスク管理を踏まえた運動強度の設定~

2024年4月19日(金)
公益社団法人田附興風会 医学研究所 北野病院 リハビリテーション科の先生に心不全と急性冠症候群についてご講義いただきました。

循環器疾患に対する運動療法について学んできました
循環器疾患に対する運動療法について学んできました